スクール・イン・プログレス2019

スクール・イン・プログレス2019に、能見師範が特別講師として参加いたしました。

mamoruと山本高之、ふたりのアーティストを共同ディレクターに迎え、リサーチやフィールドワーク、ワークショップ、ディスカッションといったアーティストの制作プロセスをベースとした実践的なカリキュラムを通じ、感覚をすまし、思考を深めることで世界を学び直すことを試みます。

「スクール・イン・プログレス」は、「living/暮らす」と「making/つくる」という人の根源的な営みをキーワードに、既にあるものや普段の生活・日常を見つめ直し、創造性の在処を見つけ、それを自らの内に育む力を身につけるオルタナティヴなアートの学校です。

 

第3回目となる今回は、最も身近でありながら最も未知な存在である「身体」に着目したプログラムを実施します。身体とは、決して肉体/bodyだけではなく、意識が宿る場であり、技術や記憶が蓄積し、快/不快を感じ喜怒哀楽が生じる生命、そして精神を含んだ存在です。こうした身体の機構の複雑な働きにより、インスピレーションを得たり、芸術作品を含めさまざまなものを生み出すことが可能となります。

高度情報化社会が加速度的に進行し、システムに取り込まれ、イメージやデータが溢れる現実を生きるわたしたちは、どこか身体や感覚を置き去りにし、硬直化させてしまっているようにも思われます。このプログラムでは、さまざまなアプローチにより「身体にdive-in(ダイヴ・イン/飛び込み)」することで、見過ごし忘れ去っていたものに触れ、「知覚しなおすこと」を図ります。そして、その経験によって把握した世界とやりとりしながら何かを作り出してみるー再び世界へとdive-out(ダイヴ・アウト/飛び出す)してみたいと思います。

新たな知覚を持ち、認識を得たそれぞれの個人が、新しい足場から眺望し、世界と向き合いながら__________ために、共に学ぶ機会となることを期待しています。

主催|鳥取大学地域学部附属芸術文化センター
協力|Kealani SURF(ケアラニサーフ)、光圓流武術教室、湖山池ベース、喫茶ミラクル
助成|文化庁(2019年度大学における文化芸術推進事業採択「地域資源を顕在化させるアートマネジメント人材育成事業」)
企画運営|School-in-Progress実行委員会(鳥取藝住実行委員会+HOSPITALE)
http://hospitale-tottori.org/program/school-in-progress-2019|living-making-for__________03/

 

https://www.facebook.com/events/320263958645628/

能見師範は特別講師として、8/11(日)に行われた|Program 02_Practice|身体についてのプラクティス 01「古武術してみる。」を担当いたしました。

サウンド・アーティストのmamoruさん、ヴィジュアル・アーティストの山本高之さん、キュレーターの赤井あずみさん、大勢のスタッフの皆様に支えられて、とても充実したワークショップとなったように思います。

参加者の皆様も、自主性があって飲み込みが早く、猛暑の中、最後まで集中して稽古に取り組んでいらして、とても清々しい気持ちになりました。

稽古後には、皆さんの姿勢がよくなっているのが一目瞭然で、その後のサーフィンなどのプラクティスでも、古武術の抜重や浮身といった身遣いが活かされていたようでしたので、講師としても喜ばしい成果を感じることができました。

 

mamoruさんと赤井さんには要所要所で模範をつとめていただいて、わたしも随分と助けられて解説も捗りました。

赤井さんと、ディレクターのmamoruさん、山本さんにお会いしてから、鳥取にいながらも様々な地域を回っているような、ボーダーレスな感覚を体験させていただいております。

様々な地域から集まった多様な立場の方々をまとめあげる難しさを、このたびは自分もわずかながら実感させていただきました。

また同日の夜の部では|Night Program_Talk & Discussion|Art Bar 01 が催されました。

テーマは宗教家・思想家と総合芸術で、岡本天明、金井南龍など赤城山に関係していた人たちの足跡や作品などを追いながら、シュタイナーやスウェーデンボリやボイスなど海外の神秘思想家や人智学者と比較しつつ、神懸かりと創造性の関係性について、ヴィジュアル・アーティストの白川昌生さんによる洒脱なプログラム・トークが繰り広げられました。

 

白川先生の知識の蓄積量や、視点や分析の多彩さが素晴らしく、参加者からも積極的な質問がなされて、とても有意義なディスカッションが続いたように思います。

また料理家の井口和泉さんとは、菜食や断食や不食についての話題で盛り上がりました。

 

「古武術の目指すところというのは、究極的には何になるのでしょう」
学芸員を勤めておられる参加者の方からは、そのような質問も寄せられました。

たしかに現代社会において、競技以外のかたちで武術を追求していく目的というのは、なかなか門外の方には想像が及ばないのではないかと思います。

笑いながらではありますが、わたしは本心を話しました。

「健康促進、能力開発、自己実現、人材育成、社会貢献など、その時その時で人それぞれ目指すところは違うでしょう。けれど究極的には、世界平和や不老長寿、場合によっては不老不死や悟りといったような、より本質的で普遍的な目標を、日々の稽古や後進の育成を通じて実現しようとするようになるかもしれませんね」

質問をされた方々は、こちらが予想していた以上に、皆さん真剣に頷いておられました。


わたしにとってもそれは、この催しに参加させていただいて本当によかったと思えた一場面となりました。

十日間に渡る長丁場となったスクール・イン・プログレスですが、段取りや進行など主催者や関係者にとっては、気を抜けない大変な状況が続いたことだと思います。


参加者の皆様も、それに見合う貴重な経験や思い出を得られたのではないかと存じます。

普段の生活や日常で何気なく感じていることを、さまざまな体験を通して意識的に見直す。
それによって、これまでに気づかなかった領域に思い至ったり、あるいは表現として伝えていく手段を得ることによって、自分ひとりの経験として留めておくことなく、さらなる学びや発展の機会へと繋げていく。

そういった進歩的な試みの数々に、とてもよい刺激を受けたように思います。

失われつつある古武術の理念や身遣いですが、このたびスクール・イン・プログレスに講師としてお招きいただいたことで、より多くの方々に文化として受け入れられる可能性があるのを実感することが叶いました。

今後とも、よろしくお願いいたします。

     令和元年八月 能見一範